ピロリ菌(Helicobacter pylori)とは

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に住みついている細菌です。
正式名称は【Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)】といい、酸の強い環境(胃酸の中)でも生存できる特殊な性質を持ち、胃がんの最大の危険因子です。日本では中高年層を中心に感染率が高く、感染は多くの場合幼少期に親の口から感染が成立します。
ピロリ菌の症状は?【自覚症状がないことも多い】
ピロリ菌感染で自覚症状が出ることは、あまりありませんが、
- 胃もたれ
- みぞおちの痛み
- 胸やけ
- 空腹時痛
- 慢性的な胃の不快感
などの症状が出ることがあります。
しかし、無症状のまま胃炎や萎縮が進行することがあるため注意が必要です。
ピロリ菌と胃がんの関係

ピロリ菌は、胃がんの最大の危険因子です。
世界保健機関(WHO)は、ピロリ菌を「確実な発がん因子(Group1)」に分類しています。
感染が続くと:
- 慢性胃炎
- 萎縮性胃炎
- 腸上皮化生
- 胃がん
という段階を経て発がんリスクが上昇します。
除菌により胃がんリスクは低下しますが、完全にゼロにはなりません。
そのため、除菌後も定期的な内視鏡検査が必要です。
ピロリ菌の検査方法
◼️保険適用の基本ルール
日本の保険診療では、「内視鏡で胃炎を確認し、ピロリ感染胃炎と診断した場合」に限り、ピロリ菌検査および除菌治療が保険適用になります。
つまり
- まず 胃カメラで胃炎を確認(健康保険診療)
- そのうえでピロリ菌検査
- 陽性なら除菌治療
という流れが原則です。

◼️ なぜ胃カメラが必要?
理由は以下の通りです。
- 胃がんの見逃し防止
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の評価
- ピロリ感染胃炎の診断確認
ピロリ感染は胃がんリスクと強く関連するため、除菌前に胃の状態を評価(胃がんがないこを確認する)することが保険上の条件になっています。
◼️ピロリ菌の検査方法
主な検査には以下がありますが、内視鏡を受けていただかないと保険診療とはなりません
迅速ウレアーゼ検査
●原理
ピロリ菌は強い ウレアーゼ活性というもの を持っています。
ウレアーゼは【尿素(urea) → アンモニア + 二酸化炭素】に分解されます。
迅速ウレアーゼ検査では:
- 胃カメラで胃粘膜を生検
- 尿素とpH指示薬を含む試薬に入れる
- ピロリ菌が存在すればアンモニア産生によりアルカリ化
- 色調変化(黄色 → 赤など) を確認(約2時間)
という流れになります。
■ 検査の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査方法 | 胃内視鏡下生検 |
| 結果判定 | 約1〜2時間以内 |
| 感度 | 約85–95% |
| 特異度 | 約95%以上 |
| 保険適用 | あり(内視鏡検査と同時実施時) |
■ 長所
- 当日結果が分かることが多い
- 検査手技が簡便
- コストが比較的低い
- 除菌前診断に有用
■ 短所・偽陰性の原因
以下の場合、偽陰性になることがあります:
- 胃薬(胃酸を抑える薬・PPI)内服中(薬の4週間中止が必要)
- 抗菌薬内服後4週間以内
- 出血性胃炎
- 高度萎縮胃粘膜
- 菌量が少ない場合
尿素呼気検査
という流れになり尿素呼気検査(ピロリ菌検査)について
尿素呼気検査は、
Helicobacter pylori(ピロリ菌) に感染しているかどうかを調べる検査です。
息を袋に吹き込むだけで調べることができる、体に負担の少ない検査です。
■ どんな検査ですか?
- 最初に、袋に息を吹き込みます
- ピロリ菌を調べるための検査薬(尿素の入ったお薬)を飲みます
- 約20分後、もう一度息を吹き込みます
- 息の成分を機械で調べます
ピロリ菌がいると、飲んだお薬が分解されて、
息の中に特別な成分(二酸化炭素)が増えます。
その増え方を測定して、感染の有無を判定します。
■ 痛みはありますか?
ありません。
- 胃カメラは不要
- 注射も不要
- 息を吹くだけ
お子さまやご高齢の方でも受けられる検査です。
■ 検査時間は?
約30分程度です。
■ 検査前の注意点
正確な結果を出すために、以下のお薬を飲んでいる場合は事前にご相談ください。
- 胃薬(PPI・P-CAB) → 2週間中止が必要なことがあります
- 抗生物質 → 4週間以上あける必要があります
※自己判断で中止せず、必ず医師にご相談ください。
■ こんな方におすすめです
- 胃がんリスクを調べたい方
- 胃の痛みや不快感が続く方
- 健診でピロリ菌を指摘された方
- ピロリ菌の除菌治療後の確認をしたい方
特に、除菌治療が成功したかどうかを確認する検査として最も信頼性が高い方法です。ます。
■ 検査の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査方法 | 胃内視鏡下生検 |
| 結果判定 | 数分〜24時間以内 |
| 感度 | 約85–95% |
| 特異度 | 約95%以上 |
| 保険適用 | あり(内視鏡検査と同時実施時) |
■ 長所
- 当日結果が分かることが多い
- 検査手技が簡便
- コストが比較的低い
- 除菌前診断に有用
■ 短所・偽陰性の原因
以下の場合、偽陰性になることがあります:
- PPI内服中
- 抗菌薬内服後4週間以内
- 出血性胃炎
- 高度萎縮胃粘膜
- 菌量が少ない場合
※PPIは原則2週間以上休薬が望ましい。
自費検査の場合
症状がなく、
- 「とりあえず調べたい」
- 健康診断で抗体陽性だった
という場合は、胃カメラなしでは自費診療になります。
⑤ 実際の臨床的な考え方
内科・消化器内科の実臨床では、
- 40歳以上
- 胃痛や胃もたれがある
- 貧血がある
といった場合、まず内視鏡を行うのが安全かつ標準的です。
① 胃カメラ(内視鏡)検査時
- 迅速ウレアーゼ試験
- 組織検査
メリット:感染の有無だけでなく、萎縮の程度や前がん状態まで評価可能
② 胃カメラを使わない検査
- 尿素呼気試験
- 便中抗原検査
- 血液抗体検査
当院では、胃がん予防の観点から胃カメラでの評価を推奨しています。
ピロリ菌の除菌治療とは
一次除菌治療
- 胃薬(胃酸分泌抑制薬)
- 抗菌薬2種類
を1週間内服します。
成功率:約80~90%
二次除菌治療
一次除菌が不成功の場合、抗菌薬を変更して再治療を行います。
除菌治療の副作用
- 下痢
- 軟便
- 味覚異常
- 皮疹
多くは軽度ですが、症状が強い場合はご相談ください。
ピロリ菌除菌後は安心?
除菌により胃炎の進行は抑えられます。
しかし、萎縮が進んでいる場合は胃がんリスクは残ります。
そのため、
✔ 除菌後も定期的な胃カメラ
✔ 萎縮の程度に応じたフォローアップ
が重要です。
こんな方はピロリ菌検査をおすすめします
- 50歳以上で未検査
- 健診で「胃炎」「萎縮」を指摘された
- 親族に胃がんの既往がある
- 胃の不調が続いている
よくある質問(FAQ)
Q. ピロリ菌は自然に治りますか?
自然に消失することはほぼありません。
Q. 除菌すれば胃がんになりませんか?
リスクは低下しますが、ゼロにはなりません。
Q. 再感染しますか?
成人での再感染は非常にまれです。
当院のピロリ菌診療の特徴
- 胃カメラによる正確な診断
- 萎縮・腸上皮化生の評価
- 除菌後の長期フォロー
- 胃がん予防を重視した管理
【まとめ】ピロリ菌は早期発見・早期除菌が重要です
ピロリ菌感染は放置すると、胃がんリスクを高めます。
無症状でも、適切な検査と除菌により将来的なリスクを下げることが可能です。
胃の不調がある方、これまで検査を受けたことがない方は、お気軽にご相談ください。
治療は、健康保険制度で一定の条件を満たす場合に保険適用となります。以下に、保険適用の条件や注意点を詳しくご説明します。
保険適用となる主な条件
ピロリ菌の除菌治療が保険適用となるためには、以下の条件を満たす必要があります
- 内視鏡検査(胃カメラ)を受けていること
保険適用の前提として、胃内視鏡検査を受けることが必要です。 - 特定の疾患が診断されていること
以下の疾患が内視鏡検査や他の検査で診断された場合、除菌治療が保険適用となります:
- 胃潰瘍または十二指腸潰瘍
- 慢性胃炎(萎縮性胃炎や化生性胃炎など)
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
- 早期胃がんの内視鏡的治療後
これらの条件を満たす場合、ピロリ菌の検査および除菌治療が保険適用となります。
除菌治療の回数と保険適用
- 一次除菌:初回の除菌治療は保険適用となります。
- 二次除菌:一次除菌が失敗した場合、再度除菌治療(二次除菌)を行うことができ、これも保険適用の範囲内です。
- 三次除菌以降:二次除菌でも効果が得られなかった場合、三次除菌以降は原則として自費診療となります。
注意点
- 内視鏡検査なしの検査・治療は自費:内視鏡検査を受けずにピロリ菌の検査や除菌治療を希望する場合、保険適用外となり、自費診療となります。
- 薬剤の選択による自費診療:保険適用の除菌治療では、使用する薬剤が限定されています。例えば、ペニシリン系抗生物質にアレルギーがあるなどで代替薬を使用する場合、保険適用外となることがあります。
ピロリ菌ってどんな菌?
どんな菌?
約3μmのらせん菌で鞭毛を回転させ動き回り、胃の粘膜細胞の間に入り込んで炎症を起こします。
うつるの?
幼少期に、親の唾液(お箸、スプーン、茶碗など)からうつると言われています。ただし、成人してからはうつらないと考えられています。
ピロリ菌がいたら何が悪いの?
ピロリ菌がいても、ほとんどの人は何も症状が出ません。胃・十二指腸潰瘍になるのは2〜3%の方です。
胃がんになる方も0.4~0.5%前後と言われていますが、日本人がかかっている胃がんの98%はピロリ感染によるものです。
みんなの胃にいるの?
50歳以上では、70〜80%の感染率といわれています。
さらに、その中で「繰り返す潰瘍」など「わるさ」をするのは1〜2%前後とされています。
ほとんどの方は「共生」している…といったかんじです。
ピロリ菌の検査はどうやってするの?
内視鏡を使う検査:胃から採取した細胞を用いて検査する方法、内視鏡を使わない検査:「息」を使う検査、「血液」「尿」を使う検査、などがあります。内視鏡をうけないで「いるか、どうか」だけをみるのは、現在の医療制度では自費になります。
詳しくはこちらをご覧下さい。
ピロリ菌の除菌って…?

感染したら、除菌した方がいいの?
日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは「ピロリ感染者全てに除菌治療をつよく推奨する」と記載されています。また、除菌の年齢制限はありません。
さらに、海外の論文でも「除菌すると胃癌発生が1/3に減少する」「ピロリ感染者の約3%が7〜8年のうちに胃癌を発症したが、非感染者では胃癌発症がなかった」などが発表されています。
内視鏡を受けない方は、自費となります。除菌と除菌できたかどうかの判断するための費用はこちらをご覧下さい。

除菌ってどうやってするの?
胃酸を抑える薬と、抗菌薬(抗生物質)を7日間内服します。
内服期間中に、下痢、味覚異常がでることがあります。内服が終わると治ります。場合により下血することもあります。副作用の種類によっては、中止をする場合もあります。
除菌は必ず成功するの?失敗したら?
1次除菌の成功率は70〜80%前後です。失敗したら、薬の種類を変えて、二次除菌を行います。
除菌が成功したら、潰瘍にならないの?
ほとんどなりません。
除菌治療が終わったら、もう受診しなくていいの?
除菌が成功したかどうかの判定を受ける必要があります。受診日時は医師にお尋ね下さい。
除菌修了後、潰瘍の治療はどうするの?
胃潰瘍の場合は8週間、十二指腸潰瘍の場合は6週間の治療期間です。それ以降にも症状が軽快しないなら、内視鏡検査が必要になる場合もあります。
除菌が成功しても、胃がん発生リスクはゼロにはならにので定期的な検査を受けることが重要です。
ピロリ菌関連の費用一覧
- 症状がなく「ピロリ菌に感染しているかどうかのみ」の診断は、現在の医療制度では自費になってしまいます。
- ピロリ陽性と診断された方は、胃内視鏡検査をうけることをお勧めします。その場合の胃内視鏡はピロリの判定・除菌治療薬・除菌効果判定のすべてが保険適応でうけることができます。
- 内視鏡検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ヘリコバクターピロリ感染性胃炎と診断されれば、保険適応で除菌できます。
- 除菌治療を受けた方は、除菌できているかどうかの判定までうけていただきます。(判定は息で検査します。)
| 名称 | 詳細 | 費用(税込み) |
|---|---|---|
| 感染診断 ピロリ菌が「いるか、いないかだけを調べたい」という方 | 初診料+尿中抗体検査(尿で判定) | 6,480円 |
| 初診料+尿素呼気試験(息で判定) | 9,720円 | |
| 感染診断+除菌+判定 ピロリ菌が「いるか、いないか。いたら除菌したい」という方 | 初診料+尿中抗体検査+除菌+除菌判定 | 20,520円 |
| 初診料+尿素呼気試験+除菌+除菌判定 | 23,760円 | |
| 除菌のみ | 除菌+除菌判定(尿素呼気試験) | 16,200円 |
他の医療機関で「ピロリ菌がいます。」といわれたが、もう内視鏡はうけたくない…、内視鏡を受けたくないが、ピロリがいるかどうかだけ調べたい…という方が対象です。