症状別

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは

能性ディスペプシア(FD)は、胃の痛みや不快感、胃もたれといった消化器症状が続いているにもかかわらず、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)などで明らかな異常が見つからない状態を指します。
「慢性的に胃の調子が悪いのに原因が分からない」「食後に胃が重くつらいが検査では問題がない」などの症状がある方に多く、非常に身近でありながら正確に理解されていない疾患です。

世界的にも“最も多い消化器疾患の一つ”とされ、日本人の10〜20%が該当するといわれています。ストレス社会や食生活の変化により、年々増加傾向にあります。

主な症状について

機能性ディスペプシアでは、以下のような症状が3か月以上続く、または繰り返し現れることが特徴です。

・食後の満腹感

食事後すぐにお腹が張り、苦しくなる。少量でもお腹いっぱいになってつらい状態。

・ 早期飽満感

少し食べただけで満腹になり、食事が続けられない。食欲があるのに途中で食べられなくなる。

・心窩部痛(みぞおちの痛み)

刺すような痛み・重い痛み・焼けるような痛みがみぞおちに出る。

・心窩部不快感

痛みではなく「重い」「気持ち悪い」「ムカムカする」といった不快感。

これらの症状は日常生活の質(QOL)を大きく下げ、仕事や食事の楽しさに影響することがあります。

なぜ症状が出るのか – 機能性ディスペプシアの原因

FDの原因は一つに特定できず、複数の要因が複雑に絡み合っています。

胃の運動機能の低下(胃排出遅延)

胃から腸へ食べ物を送り出す力が弱く、食べ物が長く胃にとどまることで「胃もたれ」「膨満感」が生じます。

・ 胃の知覚過敏(内臓知覚過敏)

通常では感じない刺激に対して、神経が敏感に反応する状態です。「みぞおちの痛み」や「不快感」に影響します。

ストレス・自律神経の乱れ

ストレスは胃の動きを直接低下させ、胃酸分泌や胃腸の調節機能にも影響します。
FDは“脳腸相関(脳と腸の相互作用)”が症状に深く関わる代表的な疾患です。

ピロリ菌の感染または除菌後の変化

ピロリ菌が胃の環境に影響し、除菌後の胃の敏感さが症状を引き起こすこともあります。

・ 生活習慣

不規則な食生活、過度な飲酒、脂肪分の多い食事、刺激物、睡眠不足などは症状悪化に関与します。

胃酸分泌の異常

胃酸が少ない場合も多い場合も、胃の感覚や動きを乱して症状が出ることがあります。

診断方法について

FDは、**「器質的な病気がないことを確認して診断する」**ことが重要です。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、逆流性食道炎などの疾患と症状が重複するため、まずは原因疾患を除外する必要があります。

当院では以下の検査を行います。

● 胃カメラ(上部内視鏡検査)

異常がないかを直接確認する最も重要な検査です。
当院では経鼻・経口を選んでいただけます。

● 腹部超音波検査

胆のう・膵臓など、消化器の他疾患を確認します。

● 血液検査

炎症反応、貧血、肝機能、膵酵素などをチェックします。

● ピロリ菌の検査

ピロリ菌感染はFDに関連するため、必要に応じて検査します。

※急な胃痛・嘔気などの場合、当院では緊急の胃カメラにも対応可能です。


治療方針

FDの治療は、患者さんの症状・原因・体質に合わせて複数の治療を組み合わせて行います。

1. 胃の動きを改善する薬(消化管運動改善薬)

胃の動きを整えることで、胃もたれ・膨満感を軽減します。

2. 胃酸を抑える薬(PPI・P-CAB・H2ブロッカー)

みぞおちの痛みや胸やけが主体の方に効果があります。

3. 内臓知覚過敏に作用する薬

胃の敏感さを抑え、慢性的な痛みや不快感を改善します。

4. ピロリ菌除菌

ピロリ菌陽性の場合、除菌によって症状が改善することがあります。

5. 漢方薬

漢方はFD治療と非常に相性が良く、
・気滞
・胃の動きの低下
・冷えやストレス
など、体質に応じて細かく調整できます。

6. 生活習慣の改善指導

患者様の生活に合わせて、無理のない範囲で改善策を提案します。


機能性ディスペプシアは「我慢しなくてよい病気」です

FDは命に関わる病気ではありませんが、症状が長く続くことで生活の質が大きく低下します。
食事が楽しめない、仕事に集中できない、常に胃が重い…という状態が続くと、精神的な負担も大きくなります。

適切な診断と治療により、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。


こんな症状があればご相談ください

当院では、丁寧な問診と検査で原因を見極め、患者様一人ひとりに合わせた治療をご提案します。
胃の症状が続く場合は、お気軽にご相談ください。

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