虚血性腸炎
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)は、大腸の一部に一時的に血流が届きにくくなり、腸の粘膜に炎症や障害が起こる病気です。特に左側の大腸(下行結腸〜S状結腸)に多くみられます。
主な症状

- 急に起こる腹痛(特に左側)
- 鮮やかな赤〜暗赤色の血便(下血)
- 時に吐き気や腹部の張り
※ほとんどの場合、症状は突然現れます。
原因は?

- 解剖学的要因によるもの:左の図のように、大腸の右上の角(脾曲部)は、太い動脈(中結腸動脈と左結腸動脈)から距離があるので、本来虚血になりやすい部位となります。
- 血流の問題によるもの:動脈効果などにより血管が細くなってしまったり、血液が脱水や脂質の摂りすぎでドロドロになってしまっているなどが引き金に。
- 便通の問題による物:硬い便を出そうと強くいきんだ時、腸の内圧が高まると大腸粘膜への血液の流れが悪くなり発症するこがあります。また、腸の動きを過剰に刺激する「刺激性下剤の服用」や、腸の筋肉を痙攣させる「脂っこいものや刺激物の食過ぎ」も引き金になります。
診断は?
症状や診察に加えて、次の検査で診断を行います。
- 腹部CT検査:腸の壁のむくみや肥厚を確認(必要あれば他施設依頼)
- 大腸内視鏡検査:粘膜のただれや出血の有無を観察すると同時に他疾患を鑑別
- 血液検査:炎症の程度をチェック
当院では必要に応じて大腸内視鏡検査で他の疾患との鑑別診断を行なっています。大腸内視鏡検査はは、診断を確実にするために有効な方法ですが、発症してすぐの炎症で腸がむくんでいる状態の方に行うと、痛みが強くて苦しいだけですので当院では急性期には行いません。
治療について
多くの場合は安静と内服治療で改善します。
- 食事の一時中止(水分のみ)→徐々に食事再開
- 点滴による水分補給
- 腸の安静を保つための薬剤
数日で症状が落ち着くことが多いですが、まれに重症化して入院が必要な場合もあります。
注意が必要なケース
次のような場合は、速やかな受診をおすすめします。
- 便に血の塊(凝血塊)が混じる
- 強い下腹部痛が続く
- 発熱や脱水症状を伴う
また、大腸がんや感染性腸炎との区別が必要なため、自己判断せず医師の診察を受けましょう。
最後に
虚血性腸炎は多くの場合、適切な診断と治療で改善する病気ですが、他の重篤な病気との鑑別が大切です。当院では、痔核(いぼ痔など)などの肛門疾患の有無の診断や大腸内視鏡検査を含め、迅速かつ的確な診断・治療を行っています。下腹部の痛みや血便など気になる症状があれば、お早めにご相談ください。